Column
動物福祉コラム
アメリカ視察旅行その2

5、SPCA LA・City of long beach bureau of animal control
https://spcala.com/
この施設はアメリカの中でも民間で最大級といわれるアニマルシェルターの施設です。 ASPCAやヒューマンソサエティなど、同様の活動をしている団体のように国や地方からの助成金は利用せず、独自の募金と収益事業のみで運営されている団体です。
事業内容としてはペットの保護に必要なシェルターの運営、動物虐待調査(ヒューマン・オフィサー、災害対応など)、人道的教育、他収益事業(ペットホテル、トリミングサロン、グッズショップ)が挙げられます。地域(ロングビーチ市)の動物管理施設と隣接し、ここで収容された保護動物の中から譲渡に適していると判断された個体は、譲渡対象動物としてSPCA LAに移管され、新しい飼い主を待つ生活が始まります。
ロサンジェルスの郊外の公園と隣接した広くて素晴らしい環境のなかにその施設はありました。
譲渡施設内には犬、猫、他の保護動物が入る施設がそれぞれの生態に合わせて作られており、猫は室内に、犬は屋外と室内を自由に出入りできる施設で管理されています。 譲渡施設の中ではそれぞれの保護動物と飼い主希望者がお見合いすることが出来ます。
猫はキャットタワーやキャットウオーク、隠れるためのスペースも作られた広い部屋で人と触れ合える環境が作られています。犬は檻越しですが、それぞれの部屋に1頭もしくは数頭が生活しており、希望者には広場での面談も可能という事でした。
動物たちが生活しているスペースの前には、それぞれの個体の特徴や性格、施設に来た経緯などが掲示されており、飼い主希望者が判断するための情報が分かりやすく記載されています。また犬の柵にはトリーツの入った小さなバケツが下げられており、それぞれにトレーニングの目的と、『○〇が出来たらご褒美あげてね!』のメッセージが記載されていました。『吠えなかったら』・『ステイが出来たら』・『座れたら』など、その子が今進めているトレーニング内容なのでしょうか、見学に来ている飼育希望者とのコミュニケーションにもとても良い試みと感じました。
この見学で興味深かったのは、この保護団体が持つ影響力でした。 ドイツのティアハイムと同様、SPCA LAの運営は、寄付金だけで賄っているという事。
慈善活動や寄付に積極的なお国柄もあるのでしょうが、組織として維持できるだけの寄付が集まるということは、それだけ社会にその働きが理解されていないとできない事です。
また日本の動物保護団体と大きく違うのは、ペットを含む動物と人間のかかわり方を、人道的な見地から社会問題として問題提起し、解決するという社会的な役割を持っている部分です。動物の保護だけではなく、例えば動物の虐待やネグレクトは、人間の心の問題であり、このような行為から人への犯罪に発展する可能性を未然に防ぎ、心のケアまでを対象として活動しているのです。
団体職員には、団体で働くための最低限の人道的なスキルが必要であり、規定もあります。
そこで活動するボランティアに対しても、一定の教育プログラムが義務つけられていて、スキルに応じたボランティア活動が求められています。
ヒューマンオフィサーに至っては、動物の虐待者に対して召喚状の発行、逮捕、刑事告発、といった権限を有しており、災害現場での動物救護にも携わることが出来ます。
もちろんそれなりの教育や経験を積み、国から任命される職です。
社会の中に適性な動物との付き合い方が浸透しているため、このような仕事にも理解があるのだと感じました。社会がここまでになるには、様々な背景があったようですが、この施設(組織)が現状の地位に至った事実は、“アニマルウエルフェア”の適正な運用は、人間社会にとって、必要であることの証明であると感じる訪問でした。
6,TPC (TOTAL PET CARE)
ケージレスドッグホテル・トリミング
http://tpetcare.com/waglife/
小林典子さんという日本人が運営するドッグホテルです。
立地はロスアンジェルス国際空港近くの工場地帯、外観は砂漠に似合う石と土壁的な質感。
入り口にはガラス戸と鉄の柵が二重になっており、もはや西部劇の世界。
待合室はちょっとしたカフェのよう、石の床にソファや家具がすっきりと配置され、とても居心地ちの良い空間です。
一通り設立までの話など伺ってから、犬たちを管理する店の奥へ案内していただきました。
いやもう広い!!が第一印象です。犬たちにとって贅沢なくらい広いのです。 倉庫を改造した建物との事ですが、砂漠地域なので暑さ対策として室内ですべて管理できるよう環境を整えたとの事でした。
立地的に、空港を利用する方のワンちゃんのお預かりが多いようですが、大型犬やケージに慣れていない子、他の犬と遊ぶのが好きという子の利用も多いとの事でした。
訪問当時、トリミングはホテル利用者へのサービスとして行っており、トリミング単体のサービスをどうするかが話題となっていました。結局運営上あった方が良いということになり、今ではトリミングも行っているようです。猫の預かりも始めたとの事で、この辺りは日本と同じ流れを感じます。
カリフォルニア州は日本人も多く、日本語で対応できるサービスには需要もあるとの事でしたが、日本人の感性が生み出すサービスは、海外の方たちにとっても人気なのでしょう。
ホテルのエピソードなどを伺いながら、それでもほっこりとした気持ちになれた訪問でした。
7、おまけ
CALICO GHOST TOWN
http://cms.sbcounty.gov/parks/parks/calicoghosttown.aspx
“アメリカの大地、地球を感じることが出来る場所へ行ってみたい!” との要望で、案内役の先生が選んでくれた場所がここでした。
道中その時期長期間続いていた山火事によって、やむなくルートを迂回するというトラブルにも巻き込まれました。道路わきでまで火が迫る箇所を通過したり、ヘリコプターによる大掛かりな消火活動を目の当たりにするという、これも貴重な経験でした。
ロスアンジェルスからラスベガスに向かう道則のほぼ中間にある、『CALICO GHOST TOWN』です。
かつて銀鉱山として栄え、ゴーストタウンとなった町。
今は観光地として当時の姿を再現し、観光施設として運営されています。 ゴーストタウンと銘打っていますが、廃墟ではありませんでした。
復元された街の建物は、素朴な木造の外観に作られており、西部開拓時代を思わせる、ガンマンやシェリフ、炭鉱夫などに扮装したスタッフが運営しています。
レストランやお土産屋などに並んで、ペットグッズを扱うショップがあったことには驚きでした。また日本の観光地にもある『コイン刻印器(圧延器)』があったのですが、日本ではコイン型の金属板を圧延加工して文字や模様を刻みますが、アメリカでは本物の硬貨を入れて加工するのだそう。やってみましたが日本だと違法ですよね・・。
そこには太陽を遮るものがなく、むき出しの山肌からの照り返しが “乾燥した地域”を否が応にも感じさせてくれます。山の上からははるかな地平線、地球は丸いことが実感できます。
西部劇の雰囲気も感じられる、まさに要望通りの場所でした。
この訪問旅行は、アメリカでの動物福祉診療の現状を視察し、日本でのビジネスモデルとしての検討を行う事が目的でした。機会を与えていただきました生田目氏・武士俣氏・西山先生には心より御礼申し上げます。
視察旅行で学んだ多くの事例やモデルは、ジーパウの行うコンサルや社会活動の場で応用できる事例も多く、今後の事業に役立てていきたいと考えます。
興味のある方はお問い合わせください。